营业悖论[娱乐圈]の感想文
娱乐圈(芸能もの)を何か読みたいな~という軽い気持ちで読み始めたのですが、本当に美しい話で読んでよかったです。
続きで感想です。
そこそこ人気はあるけどいまいちパッとした結果が出ていないアイドルグループ『Kaleido』の方覚夏は、ある日グループ内で一番仲が良くない裴听頌ととある動画でカップリングとしてバズってしまったというところから話が始まります。事務所もこれを機にもう少し仲良くしてみたら?ということで、ウマが合わないと思っていた裴听頌と二人で仕事をすることが増え、その中でお互い相手に対する印象で誤解があったことがわかり、少しずつ相手に惹かれていく……という話です。
まずデビュ死(デビューしないと死んでしまう病気にかかりました)のせいでフィクション上のアイドルものがけっこう好きになっているため、読み進めるごとにKaleidoのファンになっていき、6人組なので最初は誰が何担当か覚えられないよー!となっていたのが完全に「わかる」になっていく気持ちよさ。
・方覚夏:大手事務所で将来有望と言われていた訓練生だったのにいわくつきの噂と共に小さい事務所に移籍してきたKaleidoのビジュ担当兼メインダンサー兼サブメインボーカル
・裴听頌:訓練生時代を経ずにいきなりデビュー組になった帰国子女rap担当のグループ内最年少
(カップリングは裴听頌×方覚夏です!)
・凌一:高音担当のメインボーカル
・江淼:古琴奏者の優しくて頼れるリーダー
・賀子炎:来歴不詳のサブrap担当
・路遠:メインダンサー
事務所自体があまり大きくない上、方覚夏を始めリーダーは両親を亡くしていて兄手ひとつで妹を育てていたり、路遠はプロダンサーの道を進もうとしていたところ挫折があったり、とにかくみんな苦労人が集まっている美强惨の六人組、それがKaleidoなのです。なのできっかけはカップリングとしてのバズだったけど、全員才能のある人達の集まりなので発表した楽曲がよすぎてランキングに躍り出たり賞を獲得したりするくだりはみんな本当によかったね……!と嬉しくなってしまいます。人気が出るとリーダーとか子炎とかが個人活動で役者をやるようになって、そちらでも評価されるというのも嬉しい~。
久々に年下×年上のカップリングを読んで、久々に年下攻っていいな……の気持ちになりました。ここのカップリングのよさは、何といっても哲学の好きなアイドル×数学の好きなアイドルというところです。二人の好きな哲学や数学をモチーフに恋愛が語られ、私が好きなのはまず無理数と有理数になぞらえた恋愛観が告白シーンにつながるところです。方覚夏は元々愛し合っていた両親の結婚が破綻したことを目の当たりにしてきたことで、永遠の愛というものを信じていません。それを「数直線上に適当な点をとったときにその点が有理数である確率は0である」という言葉になぞらえています。それを踏まえての裴听頌の告白が、なぜ告白したかについての論理的な説明、と同時に拒絶されるのが怖いという心情の吐露、全てが素晴らしい。「任意の点が有理数(=本当の愛情)である可能性はほぼない、しかし自分はそれが有理数でも無理数でもこの点を手に取ろうと思った」という論理+情熱+二人だけの間にある理解という最強の告白。なおかつなぜ言おうと思ったのか?に対しての回答も論理的過ぎて裴听颂…好き過ぎる……。でも緊張もしてるし拒絶されるのも怖いって素直に伝えるところも年下のかわいい男として百点満点ですよ。稚楚文、正直ちょっと鼻につくところはあるんだけどこういう展開がやりたいのだという確固たる美意識に裏打ちされてるのがよくわかるので感服しちゃうんだよな~。あともう一つ好きなのはスピノザの話で、まず裴听頌の好きな哲学者がスピノザなのですが、意図せず方覚夏がスピノザと同じこと(自分が守ろうとするものこそが自分の本質である)を言っていたのでもっと方覚夏のことを好きになってしまった、というエピソードがまずあります。そのあと挫折の末にアルコール中毒・薬物中毒になってしまった方覚夏の父親が現れたときに、テセウスの船(改修を繰り返した舟は元の船と同一と言えるのか?)の話からスピノザ(と方覚夏)が言った自身が守ろうとしようとするものこそが本質であるという話に持っていき、今の父親はかつての父親ではない、ということを裴听頌らしい語りで方覚夏を悪夢から解放する本当に美しく組み立てられたエピソードだと思いました。
恋愛エピソードのみならず、稚楚先生のこだわりが伺えるのが雑誌の撮影や楽曲の描写で、まずまだ二人が一緒に仕事をし始めたころの撮影コンセプト『侵略する春と儚い冬』、これがまず天才だな!となったし、新曲が出るたびに全文歌詞が作者コメントに載せられてるのほんと笑ってしまいます。あと楽曲とか撮影じゃないけど、バラエティのバンジージャンプの話が好きですね。方覚夏が高所恐怖症だったのかな?怖がっているところへすでに飛び終わった裴听頌が戻ってきて「帮你渡个劫」って言ってバックハグの体勢で一緒に飛んでくれるところ、屈指のロマンチックなエピソードだと思いました。
アイドルである二人が交際を公表するか?については、わりと早い段階で先生が活動が落ち着いてから公表するよって言ってたのでわりと楽しみにしていたのですが、本当にすごいと思いました。アイドルとしての活動が落ち着いて個人活動が増えてきたデビュー8年目、世の中では同性婚ができるように法律が改正され、チームメイトたちとプライドパレードに参加するのです。(そして元々Kaleidoの面々は性的マイノリティに対する支持を表明しているという記述もあり)そこでプロポーズ、キスしてる場面がSNSに出回る(ことも見越している)ことで二人の関係の公表につながるという。本編のエピソードでもトランスジェンダーの子供から送られてきた悩み相談に方覚夏が答え、それが『营业悖论』というタイトルにつながるというエピソードもあり、日本のBLだって同性愛者、性的マイノリティへの抑圧を描いたものはあれど基本的にパーソナルな話になっていて社会を変えるっていうところまで出てくる作品なかなかなくないですか?中華BLでも結婚してるのって近未来的な世界線か(迪奥先生とか離婚申請とかあと残次品みたいなガチSF)、法律としての制度はさておいて結婚式をしてる(破雲とか)くらいしか読んだことなかったので、現代もので社会で性的マイノリティへの理解が進んで同性婚ができるように法律が改正されたっていうストーリーをお目にかかることができるとは思わなくて本当に感じ入ってしまいました。それから梁若の話も大事ですよね。事務所同士の敵対の話だけに留まらず、権力勾配を利用した芸能界での性暴力、そしてそれが告発されたときに性暴力に対する反対運動が起こるという話まで書かれていて、稚楚作品のこういうところが本当に信頼できる。番外で梁若が再登場して自分のやりたことをして大事な人と穏やかに暮らしてることがわかったのも嬉しかったです。
しかし稚楚先生、まあまだ二作品しか読んでないんだけど美学と哲学に裏打ちされたキャラクター造形が素晴らしい一方でエッチな話になると(その二人ってそういうプレイするんだ……)て感じになるのなんなんですか?(喜んで読んでいますが)作風とプレイ内容にけっこうギャップがありませんか……?可爱过敏原も後半はわりと(ふーーーん……宋煜哥哥ってそういうプレイするんだ……)という目で見ていました。
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