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自習監督

烈火の二次創作です。
春秋とちょっとだけ陛下の話。番外のネタバレ少しあります。




特能人教育所の学生たちが教室に入ると、ホワイトボードに手書きの文字が書かれていた。
『安全部の都合により盛先生が来られなくなったため、本日の講義は自習とする』
学生のうちの何人かは、安全部の宣部長と盛先生が連れ立って慌ただしく出ていく姿を見ていたため、納得の表情を浮かべている。
また別の学生たちは、教室にとある人物の姿を見つけ、驚いた顔をしていた。
「燕校長がわざわざ自習の監督に……?」
「……盛先生から直々に仰せつかったんでな」
いかにも面倒なことを引き受けてしまったという表情を隠さずに、燕秋山がそんなことを言う。
「自習の課題も預かってるよ。講義はないけど、みなさん真面目に頑張ってください」
知春がそう伝えると、学生たちは大人しくそれぞれ席についたのだった。

「知春先生、ここがわからないんですが」
「前々回の講義の内容を思い出してごらん」
「すみません、私もわからないところがあって」
「ほら、私じゃなくても燕先生もいますよ」
監督を引き受けたと言いつつも、教室の端で一人PCに向かって自分の仕事をしている燕秋山はそれでなくとも学生たちは声をかけづらいようで、質問があると言っては知春を取り囲んでいた。
「老燕、君も校長なら少しは学生たちのことを……」
「そこまで甘やかす必要はない。課題を見たが予習復習がきちんとできていれば人の手を借りなくても済むレベルのものだ」
燕秋山の取り付く島もない様子に、学生たちは不安そうな顔で知春の方を見るので、知春は慌てて励ますように声をかけた。
「もちろん自分の力で頑張るのも大事だけれど、どうしても困ったら遠慮せず相談してくださいね」
そうして学生たちはほっとした様子を見せ、あるものは席に戻ってノートと向き合い、ある者はやはり困ったように知春に質問を続けるのだった。
そんな彼らの様子をしばらく眺めていた燕秋山だったが、突然知春の名前を呼んだ。
「……本体」
燕秋山はそれだけ言うと、知春の方に向かってひらりと手のひらを振ったのだった。意図するところを掴みかねて首を傾げた知春だったが、はっと何かに気付いたような声を上げた。
「秋山……っ!」
燕秋山の視線は知春からは離れず、しばしの間のあと、知春にしかわからない程度の満足げな顔をしてまた自分の手をポケットに突っ込んだのだった。


本来の講義の時間があと三分で終わろうかという頃、盛霊淵が教室へ入ってきた。
「急なことで世話をかけたな。課題は私の方で預かろう」
「いえ、私は自分の仕事をしながら見ていただけなので」
盛霊淵の労いの言葉に、燕秋山は軽く答える。お役御免とばかりにさっさと教室を去ろうとする燕秋山の手元に視線をやり、盛霊淵は小さく笑った。
「『だけ』ではないのではないか?学生の監督をしながら外套に隠して情人の手を握るとは、浮かれたひよこからも出てこない発想だ」
「……」
課題を提出し終えて疲労困憊となった学生たちは、あの燕校長が何もないところで転びそうになるのを目撃し、思わず目を擦るのだった。

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