忍者ブログ

幻のような思い出も少し

残次品二次創作。
この前の新番外のその後のちょっとした話です。








せっせと写真と動画を整頓している陸必行を横目に、林静恒はラム酒の入ったグラスを傾けた。
無限の体力を誇る第八星系総統でも、はしゃぐ子供二人を相手にしていると育成センターに提出しようとしている書類を破り捨てたくなるほどだったが、しかし目を輝かせている夫を見ればやはりその選択は正しいのだろうという気持ちにもなってくる。
そのうちに湛盧が屋根裏にやって来て、子供たちは元の世界に帰っていったことを告げた。
林静恒は頷いて湛盧に休眠を命じると、陸必行が何か言いたそうな目で自分の方を見ていることに気付いた。
「ねえ、本当に覚えてないの?」
「そうだな。トラブルがあったことは記憶にあるが、子供の頃に見た夢をいちいち覚えているか?」
「まあそれは僕も自信がないや。残念だけど、こういうところでタイムパラドックスは防がれているんだろうね」
陸必行はわざとらしく肩を竦めて見せた。
残念だけど、と陸必行は言うが、しかし実は残念に思っているのは林静恒も同じであった。もしも今日のことを覚えていることができたなら、彼のことを生まれるずっと前から慈しむことができただろう。
無力だった当時の林静恒の愛が何かを変えられたとは思わないが、ついそれでも、と願ってしまう。
林静恒のグラスが空になったのを見て、陸必行はもう寝ようかと言った。
「よく考えたら僕も今夜はいつもの就寝時間に寝そびれてたんだよね。それに気づいたら急に眠くなっちゃった」
「うん」
あくびをする陸必行の髪を撫で、ふと思いついたように林静恒はそのこめかみに口付けをする。
「わあ、急にどうしたの?子供たちの代わりにおやすみのキスをしてもらえてるのかな?」
「いや、ただ少し思い出しただけだ」
「何を?」
「……陸必行という少年を大事にしたいと思った気持ちを」
「静恒……」
照れながら凭れ掛かってくる陸必行の肩を抱き、林静恒は耳元で囁いた。
「だから今日は聞かないでおいてやる。どうして俺のパジャマがぐちゃぐちゃになって布団の奥に隠されていたのかを」
「………」
その後、陸必行は疚しいことは何もしていないのだと言い訳をするために、就寝時間はさらに遅くなったのだった。



拍手[0回]

PR