忍者ブログ

中国のBL規制 ~各表現媒体による規制の程度の違い~

こんなものは中華BLを読んでるみんなはすでにご存知だとは思いますが、中国のBL規制が話題になると中国ではBLは禁止されてるとかBLを書くと捕まるみたいな雑なこと言われがちなので、まとめておくか~という記事です。
規制の程度の違いは私はこれまで見たり読んできたりした経験から書いてますが、ドラマ、アニメ、漫画、小説、ラジドラなど色々日本にも入ってきてるので、実際どんな感じか確認はしてもらいやすいんじゃないかなと思います。簡体字版書籍は中国語読める人に見てもらって!
あとここでいうBLは基本的に日本で言うところの商業BLのことを指しています。同人とか二次創作はまた少し違うかもです。


規制が厳しい順に紹介していきます。

【1、映像作品(ドラマ、アニメ)】
BL原作がドラマやアニメになるとBL部分が全て削除されてしまうという意味で、一番厳しい媒体に分類しました。
(とはいえ時期によってはBL作品も制作されていたこともあるのですが)
ドラマに関してはとくに2021年9月に中国政府が騰訊とかネットゲームの会社に未成年に対して良くない影響を与えるものを規制するような通知を出し(リンク)、その中に「耽美(BL)」が含まれていたりということがあってかなり風当たりが厳しくなった印象です。
厳しい規制の中どうやってBLのニュアンスを表現していたのかというのは、ひつじ書房「中国とBL 耽美(Danmei)をめぐる社会情勢と魅力」がわりとまとまっていてわかりやすいと思います。
アニメはBL部分が削除されるとは書きましたが、そもそも最近の人気作で完結まで持って行けた作品を魔道祖師くらいしか知らず、同作者の人気作品・天官賜福もやっと二期、大体は一期止まりか二期まで配信されたらラッキーって感じです。トレーラーまで作られてるけど全然世に出てこない作品はいくつも心当たりが。(默读者と六爻を楽しみにしてるんですよ!)まあそういう意味ではアニメも厳しいという言い方をしてもよさそう。
やや余談ですが、BL部分が削除されたメディアミックスを耽改と呼んで日本語だと中華ブロマンスなんて呼ばれていますが、完結してるならまだしも、アニメとかでまだ恋愛ストーリーが始まってない一期をブロマンスって呼ばれてもなあというモヤモヤがあります。


【2、紙の簡体字書籍】
BL部分が削除される点では1と並べようかと思いましたが、実際に読んでて時々(これは……?)と思うことがあったので次点にしました。
中国の書籍出版は検閲を受けて許可されたものでないと違法出版になると聞いたことがあり、実際に厳しいのだと思います。しかしドラマやアニメだとキスシーンは完全になくなってるんですが、書籍だと口へのキスはNGだけど、手とかおでことか顔へのキスはあるんですよね。あと同衾もしてる。性的なニュアンスがなければいいのか?あと主人公たちを指して男朋友(彼氏)という言葉は使われないけど、男性の知り合いに彼氏がいるいないという話は出てきてました。それと別の記事で書いたんですが、元々友人の彼氏の振りをするという設定のBLは、書籍版でも彼氏のふりをしてて偽の彼氏ならいいんか!!??となったりもしました。
3で漫画はBL描写ありだという話してますが、それはウェブトゥーンの場合で、書籍化された時は「元カレ」→「チームに誘いたかった相手」みたいにBL的台詞が修正されてたのを見ました。


【3、漫画・ラジオドラマ(ネット配信)】
ここからはBL描写ありの媒体です。
漫画とラジドラは表現の方法が全然違うので比較が難しいのですが、キスシーンもベッドシーンもあるし、トータルで見ると同程度かなという判定です。原作ありの作品では書籍版のようにごっそり削られたりせず、わりと原作小説通りに再現されてるというのも漫画とラジドラの共通するところだと思います。
今はピッコマなどで中華BL漫画が色々読めて、具体例かつ好きな作品を挙げると「あの日の誓いを果たすために」、「FOG」、「君と掴む光。」とかかな?キスシーンになると不自然な角度で顔がフレームアウトするんですよ。具体的にいうと、キスしてる口元が見えないようになってるのです。しかしキスシーンなことは完全にわかる描き方です。これらの漫画は快看という中国の漫画アプリに原語版があり、(「妻为上」、「FOG」、「撒野」)言語版はさらに白い光とかお花とかで激しく隠されています。FOGとかかなり肌色の多いベッドシーンがあるのですが、原語版はほぼ全然見えなかった!でもベッドシーンなことはわかる!
ラジドラは漫画のようなあからさまな隠しはない分、ベッドシーンが一瞬で終わる、BGMにかき消されるなどの制限があります。しかし絵のような直接的な表現ではないせいか、キスシーンも原作小説よりも長くて濃厚になっていないか?みたいなこともあり。日本のBLCDみたいな激しいリップ音とかはなくて基本的に吐息で表現されます。と思ってたんですが、最近聞いた作品はわりとちゃんと(?)リップ音もありNGではないのかな?ベッドシーンも直接的な効果音はもちろん喘ぎ声とかもなく(あ……くらいは言ってるかも)、台詞と吐息って感じです。


【4、WEB小説】
漫画やラジドラに比べてもっと激しい表現ができるかと言われたらそこまでではないのですが、作品によってはそこまで書いていいんだ~みたいなのもあって、WEB小説の方が緩い判定にしました。
小説については前に色々と書いたのでそちらをご参照いただければ。


【5、(番外)海外出版、海外プラットフォーム】
これを出すのはややずるい気もしますが、誤解を恐れずに言えばエロが見たかったら海外版を見てください。魔道祖師の4巻と番外にかなり濃厚な性描写があることはご存知かと思いますが、台湾繁体字版やそれをベースに訳された日本語版その他言語はそういう描写があるわけです。ちなみに中国国内では魔道祖師はWEB連載版は鎖(ロック)、簡体字版書籍が1巻だけ出ているという状況です。今度11月に日本語版が出る二哈和他的白猫師尊も性描写が激しいことで有名な作品で、4でリンクを貼った記事でも書きましたがこれ本当にネットで掲載されてたんですか?二哈は自分で読んで確認したわけではないのですが、簡体字版はBL描写削除なはずで、台湾繁体字版は性描写ありだと思います。日本語版も普通に性描写ありのバージョンで読めるのではないかな~と思ってます。魔道や渣反、二哈が有名過ぎて繁体字版=エロ有りのイメージがあった頃もあったと思いますが、当然元からそういう描写がない作品は海外版だろうがとくにないです。priest作品とかその代表ですね。でも殺破狼の初夜は繁体字版でちょぴっと加筆されてました。
海外プラットフォームは要するにAO3とかツイッターのことです。国内プラットフォームでは書けないような部分を書いてくれてる作品もたまにあります。今日本語版が連載中の病案本も、先生がツイッターのアカウントを持っててある日スクロール動画で性描写ありのシーンがアップされて連載を追ってた人たちが頑張って読んでた思い出。


という感じで媒体ごとに規制の程度がまちまちなので、「中国ではBL禁止です」みたいなこと言われてると雑だな~と思う一方、実際に自分で見たり読んだりしないとわからないよなあとも思うので、書いてみた次第です。あとは規制自体はマジであるので、茶化されたりするのも嬉しくないですね。書き手や読み手が自虐(?)的にネタにすることはあるけども。

拍手[14回]

PR