忍者ブログ

社会的地位の剥奪~MXTX作品とpriest作品~

mxtx先生もきっとまた新作を書かれることだろうと思うので今ある三作品だけであれこれ論じるのもナンセンスかもしれませんが、priest作品を読んでると主人公の社会的地位の剥奪の有無がかなり違うな~ということを考えていたので雑談として置いておきます。(priest作品の方もまあまあたくさん読んだとは思いますが全部読んだわけではないです……念のため……!)
当然、主人公の社会的地位の剥奪があるのはMXTX作品の方です。
犯人として糾弾され捕らえられる沈清秋、言わずもがなの夷陵老祖、太子殿下の貶謫、いずれも人から称えられるような立場にあったのに、人々から後ろ指を指されるようになる展開がある一方、priest作品の主人公たちは地位をキープしがちだなーと思ったのでした。もちろん最初から強い立場にいたわけではなく、苦しいところから這い上がってきた人たちもいるわけですが。
七爺の王爺と南疆の後継者、しゃぽの大帥と四殿下、黙読の会長様とお坊ちゃん刑事(費渡の会長様っぷりに目がくらみますが駱隊もまあまあお坊ちゃん育ちなんですよね)、残次品の将軍と総長、烈火の陛下と族長あたりがわかりやすいパワーカップルですかね。展開としてこちらも時々罪に問われたり捕まったり暴君だと史書に書かれたりとかはあるわけですが、なんというか民衆から石を投げられるような事態にはなってないと思うんですよ。天窓から抜けて乞食のようななりで江湖をふらふらしていた周子舒は比較的社会的地位の剥奪に当てはまりそうですが、自分の意思で抜けてきたのとこっちもあまり民衆から責められてはいない印象です。
MXTX作品はさ……事実としての瑕疵とか逆恨みとかが入り混じった民衆の憎悪をぶつけられるのがめちゃくちゃつらいじゃないですか……。しかしその中で苦悩したりしつつも自分の生き方を貫く主人公たちの泥まみれの輝き……みたいななのが作品の魅力だなあと思っています。
以前priest先生のインタビューの紹介記事を書いたことがあって(priest先生のインタビュー記事紹介①~残次品~)、記事では紹介してないのですがpriest先生の作品はエリート気質だと言われることについてどう考えていますか?という質問があります。インタビュアーは誉め言葉としてのエリート気質だと説明してますが、そう言われてるのはたぶんいい意味だけじゃないよなーと思っていて、上で書いたように強者が強者のまま物語が進むところに私はエリート主義っぽさを感じてしまうので。エリートとは困窮した人々のために声をあげる人文主義的立場の価値観を持つ人物、また伝統的な古典文学資源について自覚的に継承するような人物のことだとインタビューの中では言われていて、priest先生本人は自分はそんなにいいものではないです(意訳)と否定していてうまく逃げたなと思わないでもないですが笑。
「BLと中国」の「第四章 中国のヒットBL」でpriest作品について触れられていて、なんかpriest作品だけ妙に批判的じゃないですか!?私がP大ファンだから穿った見方をしてしまうだけかな!?とはいえ「中流階級の知識人女性としての自身の作家像を作る」とか「自分の中流階級の属性や文化的教養をさりげなく見せている」とか……ちょっと書き方が……。しかしこういう見方をされているというのはわからないでもなく、前述したエリート気質だと言われてるところと繋がってるんだろうなあと思います。priest作品に出てくる貧乏人が本当の貧乏人ではなく想像の中の貧乏人に過ぎないって言われたら私は反論するすべがないのですが、すでに邦訳連載版が出ている黙読の第一部の被害者青年の話とか、それらでは不十分という話なんでしょうか。ただ「まるで「鎮魂ガール」が、上海二子タワーに流れる『鎮魂』ドラマに浸った後、ある日突然、上海からそれほど遠くない徐州で、八人の子供を持ち精神障害を患っていると言われる女性が部屋に閉じ込められ、鎖でつながれていることを初めて知ったというようなもの」のくだりは批判の展開としてけっこう無茶ではないですか……!?わからん……私の知らない文脈があるのかも……。
とまあBLと中国を読んでモヤモヤしていたことを入れ込んでしまいましたが、私はpriest作品を愛読しつつ良くも悪くもエリート気質と言われることもよく理解でき、MXTX作品がドーンと入ってきている中でこれからpriest作品を読み始める人がいるとこのあたり引っかかったりする人がいるんじゃないかなあと思ったのでちょっと書いておこうかと思ったのでした。とはいえ社会権力や国家権力が強者として好意的に描写されるのと同時に、民衆・市民の力を信じているというか、名もなき人々は時に愚かだったり浅慮だったりするけどそのような人々の力や善性に社会は支えられているのだという希望的な描き方もひとつのエリート的なものだと思っていて、そういうところが私は好きだったりするんですけどね!







拍手[8回]

PR