仙道第一小白脸の感想文
女装攻の仙侠ものという前情報しか知らなかったんですが、一十四洲先生らしいダイナミックな世界観にすご~~~!!となる作品でした。
以下ネタバレあり感想です。
文案でわかるあらすじは、主人公はお嬢様(大小姐)という婚約者がいるんだけど、実は女装男子なお嬢様は主人公のことを男装女子だと思っており、主人公はお嬢様のことを本当に女子だと思ってる修仙BL……という設定からして面白そうじゃないですか?
しかしこの文案のあらすじ、まあまあストーリーが進んでそういう関係だとわかるので、そこまで文案に書いちゃうんだ笑とはなりました。
物語の始まり方は、主人公の林疏は現代人で謎の師匠に修仙を教わっていて、渡劫でうっかり修仙世界に転生してしまうという実は転生ものなのです。まあそれも後々……(むにゃむにゃ)数年前に謎の修仙者が結界で保護してくれた村の少年に転生してしまった林疏は、偶然知り合った鳳凰山荘という女性しか入門できない門派の女の子たちと知り合って、彼女たちも所属しているこの世界の修仙学校である上陵学宮に入学することになります。そこでみんなの憧れの的であるお嬢様こと凌鳳簫になぜか気に入られ、お嬢様に飼われて可愛がられているハムスターのような生活を送ることに。
という前半はお嬢様が女装男子とかではなく完全に「お嬢様」としてしか登場しないため、修仙ものの学園男女ラブという感じで話が続きます。100章くらい……!!90章くらいではBLになる前に百合になります(どういうこと?)100章をこえるとだんだんBLになっていきます。この前半の学園男女ラブ期が私はかなり好きで、今思うと色々伏線がいっぱいあったなあと思いますが、お嬢様のかわいがってるハムスターという自覚を持つ林疏の描写が一十四洲先生のユーモアセンスが炸裂していてずっと笑顔で読んでました。
それと修仙ものってこの世界の政治はどうなってるんじゃ!となることが多いんですが、仙道第一~は宮廷政治ものの要素もあって、政治と修仙の関わり合いの設定とかかなりなるほど!という感じで私はそこも好きでした。南北朝の争いがある時代で主人公たちは南朝側に属するのですが、南朝では朝廷と修仙界は相互に協力関係にあり、魔物退治みたいな朝廷が解決できないことは、朝廷が庇護している仙門に助けを求め、 仙門派は毎年朝廷に「仙税」を納め、一方で朝廷に多くのポストが修仙のために設けられている……みたいな設定が本当に好み!そしてお嬢様こと凌鳳簫は実は南朝の皇女で、南朝王族は昔から鳳凰山荘の女性を妻にすることで強大な力を得ていて、また対立している北朝は邪悪な巫術を使って人々を統治しようとしている、みたいなところからどんどんストーリーが広がっていきます。この北朝の恐るべき術師の大巫がいわゆる敵キャラみたいなポジションなんですが、終盤のちょっと手前くらいで勝負がついてしまうんですよね。あっここで大巫の話は終わるんだ?と思いながら読んでいたら……すごかった!
BLなのでBLの話をしますが、南北の戦争が激化して主人公二人が桃花源という俗世間から隔離された平和な村に逃げ落ちて、そこでお互いの性別に関する事実を知り、ちょっと気まずくなりつつも男同士の友情を育んだあと恋愛関係になっていくのもすごくよかったです。蕭韶(お嬢様の男の姿(?))はお嬢様とはまたちょっと違う癖があり、最初は優しい青年って感じだったけど一十四洲先生攻なのでやっぱり「君を苛めていいのは私だけ」とか言い出すんだ。それと修仙BLで双修といえばエッチなことを指す便利な用語として知られていますが(そうなんですか?)、林疏は脈絡に損傷があって、鳳凰山荘の血を引くお嬢様は炉鼎としての性質があるので双修をすれば林疏の脈絡が回復できるっていう設定があるんですよ。そ、そんな絵に描いたようなおいしい設定……!と思っていたところで戦争が激化して死地に赴かなければならないときに、双修をすれば希望が見えてくるかもしれないっていう切実でシリアスな展開になるんですよ。この時の二人はまだ両想い未満で、でも本当に双修するんですよ。(とはいえどの程度の行為だったのか私は読み取れなかったのだが)まーここからだいぶ本格的に両想いになるのも本当なんですがね!感想メモ見返したら蕭韶が林疏のこと「宝宝」って呼び出すのもこのへんだな。宝貝って呼ぶ攻めはそれなりに見かけましたが宝宝は初めて見たよ。
終盤は蕭韶の出生にまつわる皇室と鳳凰山荘の因縁の話になり、別離が続くけっこう胸の痛い展開になるのですが、しかし話の畳み方がすごかった!!仙道第一小白脸は修仙SFです!!万物之理=物理!!ダイナミックでかなりヘビーな話ではあるのですが、一十四洲先生の軽やかな筆遣いとユーモアセンスが絶妙にマッチしていた名作でした。簡体字版書籍のタイトルは「折竹」なんですが、これも今思うとワーーーー!!ってなりますね。
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