お節介あれこれ
色々あって原作読み返したりしていたら舟渡が書きたくなったので……。舟渡と陶然の三角関係は本当に優しい関係でとても好きです。
「陶然がついに車買うらしいぞ」
「えっ、何も聞いてないんだけど」
帰宅した駱聞舟がリビングのソファーで子猫を膝に乗せて遊んでやっていた費渡にそう言うと、心から驚き残念そうな顔を見せた。
「それなら僕に相談してくれればいいのに」
買ってきた夕食をキッチンに置きに行ったあと、駱聞舟は費渡、子猫と順番に頭を撫でて呆れたように言った。
「馬鹿、あいつの給料でお前御用達のディーラーに連れて行ってみろ。冷や汗かいてぶっ倒れる」
自他共に認める車道楽の費社長は、どう考えても一介の公務員が車を買う相談相手に適しているとは言い難い。
「ちゃんと陶然哥の希望に沿ったところを紹介するつもりだよ。……というかついに車を買うってことは」
「まあ、何か考えてることがあるんだろうなあ」
お見合いをするなら車を貸してやるからという二人の申し出を断って、幸運なことに相手の価値を車の有無などで判断しない素晴らしい女性と巡り合った陶然である。それが車の購入を検討しているというのはどのような心境の変化かと推測をしてみれば。
駱聞舟はなんとも複雑な笑いを零し、それにつられるように費渡も珍しく曖昧な笑みを見せた。お互いに陶然を巡って火花を飛ばしあってきた二人だったが、こうして二人で暮らしていればすっかり遠い昔の出来事のようだった。
費渡の隣に駱聞舟が座ると、足元で費渡の膝を狙っていた一鍋がこっちで我慢してやるかと言わんばかりのふてぶてしさで駱聞舟の膝の上に上がってくる。穆小青にまた毛を刈られないように駱聞舟が腹の肉を触って確かめると、またすぐに逃げ出されてしまった。
「ていうか陶然哥、妙にまだ付き合ってるとかなんとかはっきり言わないよね」
「この前も肖海洋に『先輩、彼女いたんですか?』って言われてモゴモゴしてたしな。それ聞かれたら逆に怒られるだろ」
「絶対彼女の方は付き合ってるって思ってるはずだけど」
そこまで言って、思わず二人は目を見合わせた。
「俺らは一体陶然の何なんだ?」
「……仲人?」
費渡が真面目な口調でそう返すので、思わず駱聞舟は吹き出した。
「それじゃあ俺らはあまり若い二人にいらないお節介をしないようにしないとな」
「そうそう、間違っても職場で結婚はいつだ?なんて聞かないように」
どの口がそんなことを言えるのかと駱聞舟が費渡の唇を摘まんでやると、照れもせずに指先を舐められた。
いじらしくも一鍋と一緒に遊んでもらおうとする子猫を床に下してやりながら、費渡が尋ねた。
「師兄は車を買い替える予定は?」
「そんなに頻繁に買えるか。まだまだ綺麗で十分乗れる」
「そう?まあ、まだ汚すようなこともしてないしね」
そんなことを言いながら費渡が意味深な視線を送ってくるので、駱聞舟は目元を赤くしながら叱る。
「費渡!」
「確かに現役のおまわりさんがそんな理由で職務質問されるのも悪いか。ああ、じゃあ私有地ならいいのかな?」
「~ッ!」
これ以上下世話な冗談を続けられないように費渡の口は塞がれ、猫二匹の夕飯は少しばかり遅れることになったのだった。
PR