某某の感想文
木苏里先生の作品を何か読んでみたいと思ってて、一番タイトル聞いたことがあったのが某某で、あと現代ものだし読みやすいかな?と。
序盤はちょっと慣れない言い回しが多かったのと、学園生活のディティールを細かく描写していく感じでそこまで乗れないかもと思ってたのですが、二人の距離が接近し出してからはもう夢中で読んでしまいました。
途中でつらい展開があるらしいと聞いてから読んでたのでどんなに主カプが甘々でも油断できないということはありつつ(実際かなりつらい)、でも本当に読んでよかったです!
続きでネタバレあり感想です。
親の再婚(まあ厳密には結婚前の婚約状態くらいなんですが)で一緒に暮らすことになった高校生二人、江添×盛望が主役カップリングです。マイペースなお坊ちゃんの盛望が、一見冷たく見える江添の優しさに触れてどんどん意識していき、実は江添の方も盛望に惹かれていた……というわりと王道ストーリーで、心理描写を丁寧に丁寧に描いてあるので盛望が自分の中にある恋愛感情に気付いてから両思いになるまでのあたりは本当に目が離せませんでした。学生たちの面倒をよく見てくれる卒業生の先輩同性カップルのキスシーンを目撃してしまった盛望が悶々とした日々を過ごす中、ルームメイトとの会話で(誰が好きで誰が嫌いかなんて、自分が一番よくわかってる。自分はとっくにわかっていたはずだ……。江添が好きだ。)って確信するところは本当に甘酸っぱくて切なくて……。親が再婚してしまったら二人は兄と弟になるわけで、それでなくてもこの段階ではもう兄弟として認識されてて、それなのに恋愛感情を持ってしまうなんて……という葛藤が切なく、だからこそ江添の方も盛望に対して恋愛感情を持っていたとわかる瞬間の盛り上がり!江添は江添ですごく躊躇ってたんですよね。でも盛望の誕生日にこっそりプレゼントを用意して、眠ってしまった盛望に誕生日おめでとうと言って手を握ったら実は起きていて、ここで逃げてしまいそうになる江添を逃さずに気持ちを尋ねようとする盛望というのがめちゃくちゃよかったです。「どうして僕にこんなに優しくしてくれるの?」「お前の兄だから」「じゃあ、手を取ったのも兄だから?」「……」「兄さん、僕と同じくらいドキドキしてる」このやりとり!普段はどっちかというと江添の方が一枚上手って感じなんですが、ここの盛望が確実に仕留めにきてて(でもそのあとのキスで記憶が吹っ飛んでしまうのかわいい)好きなんですよね。そのあとは合宿で二人部屋だったり、寮で二人きりになったり、実家で二人きりになったり、隙あらばいちゃいちゃしていて甘々でかわいい反面、これが悪い方へ転がらないかハラハラしてしまうという……。いや、二人は何も悪いことはしてないんですがそもそも中国は早恋があんまりよく思われてないのと学覇二人をよく思っていない同級生がいるのと、あと親たち!!親たちがね~~~~~~ほんとに胸糞が悪いんですよ……二人が何をしたっていうんだよ……。季寰宇と杜承→全ての元凶でとくに季寰宇がクソ、江鴎おばさん→被害者ではあるけど子供たちを追い詰めたのは事実、盛明陽→この中では比較的マシかと思いきや盛望に対する責め方がひどすぎる……という感じで、最終巻でそれぞれの決着があるんですが、身内だから思いっきり復讐してスッキリ!というにはいかなくて、個人的には江鴎と盛明陽はある種の和解はしたけれど自分が子供たちにしてきた仕打ちがどれほどのものだったか思い知っただろうから手打ちにしてやろう……という感じでした。二人の周りにいる同級生たちがみんないいやつばっかりなのが救いですね。大人たちのせいで離れ離れにならざるを得なかった時間を埋めるかのように、最終話で盛望が一年一年の江添の誕生日を祝って愛してるって言ってくれるところは本当に泣いてしまう。
某某は甘々なところも痛々しいところも台詞回しがとにかくクリティカルに入ってくるのでなるほどこれは名作だなあと思いました。
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