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クリスマス陸林

残次品二次創作。
クリスマスなので!
本編のネタバレではありませんが、18年後番外ネタです。




Daddy Kissing Santa Claus



新星暦以前の宗教はそのほとんどが途絶えてしまったが、しかし大衆的な行事と結びついたイベントは宗教的な意義とは切り離されて現在でも存続しているものがある。
クリスマスというのは中でも最も有名なものだろう。
聖人誕生の物語を知る者がいなくても銀河城の通りには赤と緑と銀に彩られた飾りつけがなされ、広場には大きな樅の木の姿が見える。
そして聖ニコラウスの名を知らなくとも、子供たちはサンタクロースの存在を信じたり疑ったりしながら靴下を吊るしてプレゼントを楽しみに待つのだった。そして、それは第八星系独立政府元総長と独立軍総統の家の双子たちも例外ではなかった。
二人の家ではイベントごとが好きな陸必行の提案で、双子が寝静まった頃にそっと枕元にプレゼントを置いておき、翌朝起きた双子たちがはしゃぐ様子を眺めるというのが恒例行事だった。しかしプレスクールに通うようになった彼らは、お決まりのサンタさんはいない、プレゼントを用意しているのは親である、という言葉を級友たちから聞くことになる。
「いい?今年は寝ないでちゃんとサンタさんが来るかどうか私たちで確かめるんだからね!」
「はいはい」
威勢のいい陸果にうんざりしたようなため息をつく林然だったが、内心は彼ももしかしたらサンタクロースはいないのかもしれないという疑惑にショックを受けているのだった。子供たちの作戦は単純で、寝ずに見張っていれば毎年プレゼントをくれるサンタクロースを目撃できるだろう、というものだ。
だが、陸必行のハグ、林静恒のキス、それから湛盧の子守唄によって規則正しく早寝早起きをする習慣がついてしまった子供たちが深夜まで起きているのはなかなかの困難であった。ベッドに入って数分のうちは頑張って目を開けていた二人だったが、すぐにうとうとし始めた。
「うーん、そろそろ大丈夫かな?」
小さな声で独り言を言いながら、陸必行は足音を忍ばせて子供部屋に入る。なんとなく今年は双子たちの様子がいつもとは違うように感じたので、念には念を入れて赤い帽子に赤い服、白い付け髭というサンタクロースのコスチュームを身に着けてやって来たのだった。幸いにも子供たちはすやすやと眠っているようで、陸必行は頭を撫でたいのをぐっと我慢してプレゼントを置き、愛する夫への贈り物を渡すべく足早に立ち去った。
クリスマスの奇跡というのだろうか不運というのだろうか、陸果と林然はその微かな物音でぱちりと目を開けた。
「今!今来たよ!早く!」
「わかってる!爆弾みたいな声出さないで!」
布団の中でひそひそ声を交わし合いながら、そっとベッドを抜け出して子供部屋のドアを小さく開けて『サンタさん』の姿が見えないかドキドキする胸を抑えながら部屋の外を伺った。
はたして、階段の外には一仕事終えた真っ赤な服を着た『サンタさん』の後ろ姿が見えた。
「サンタさんだよ!」
「うん!……あ、でも見て。パパも一緒にいる……」
林然の言う通り、サンタクロースの向いには林静恒の姿が見え、なんとなく親しげに話しているように見えた。
「パパは知り合いなのかな?」
「老陸はどこに行ったんだろ」
二人がそんなことを話し合っている時だった。
「「!!??」」
サンタクロースが林静恒の頬にキスをし、それだけでも衝撃だったのだが、なんと林静恒も苦笑いをしながら同じようにキスを返す姿を目撃してしまったのだった。林静恒がそんなことをする相手は陸必行以外には考えられず、二人は見てはいけないものを見てしまったと目を見合わせた。
おろおろとベッドに戻り、布団の中で先ほど見てしまった衝撃的な場面について話し合った。
「ねえ、このこと老陸は知ってるのかな?言った方がいいと思う?」
「でも喧嘩になったら困る……」
二人の前で陸必行と林静恒が喧嘩をしたことはほとんどなく、林然は戸惑ったように答える。
「じゃあまず湛盧に相談してみようか」
「それがいいかもね」
こうしてひとまずの解決策を見つけた二人は一夜の冒険にすっかり疲れて眠り込んでしまった。
そして翌朝、連盟の至宝と呼ばれた湛盧は深刻な顔をしてやって来た二人のために最高級の人工知能をフル回転させてサンタクロースの夢を壊さずに林静恒は浮気をしていないことを説明するストーリーを作り上げたのだった。

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