千秋の感想文
ネタバレあるので折りたたみます。
アニメの山河剣心の方は見ていたので理解しやすいかな?と思ったんですが、けっこうアニメは色々アレンジされてるんだなーということがわかりました。
晏無師がセクハラをしてくるおじさんだという前評判(前評判というかアニメ見ててもまあそうですねという感じだが)があったりみたいなイメージがあったりして濃いめのBLなのかと思ってたんですが、全体として硬派で爽やかな話だったなーと思いました。どんな裏切りにあっても人を信じることをやめず、己の為すべきことを為し、その上で強くなっていく沈嶠の生き方がとにかくブレないというか。そして、最初は沈嶠がひどい裏切りにあったらどんな風に変わってしまうのかを楽しもうとしていた晏宗主が、そんな沈嶠の姿を見続けているうちに己の心が変わっていっていることに気付く……という、真摯な心と心の触れ合いで晏沈が結ばれたので爽やかな話だと感じたのかなと思います。
個人的に武侠ものを読むのがちょっと苦手だと思ってて、戦闘シーンの読解が日本語の小説でも不得手なのと、たくさんの門派とそれらに所属するたくさんの人を把握するのが大変という理由なのですが、コツコツやるしかないと思って今回はとにかく初めて出てくる(or忘れてる)人物が登場したら名前と所属を逐一メモするスタイルでやっていったらそこそこ相関図がわかるようになった気がします。天涯客の反省!これでこの先も武侠ものを攻略できそう!
千秋はけっこう細かいエピソードの積み重ねなので全体的な感想を書くのが難しいんですが、好きなエピソードをいくつか書こうかなと思います。
まず白茸の話から。アニメを見てた時にかわいくてお気に入りのキャラで、沈嶠とこの先どうなるんだろうと思っていたので二人の結末を見ることができて嬉しかったです。白茸のことを案じる沈嶠に晏宗主が白茸を憐れむのは余計なお世話だろうと言うところとか、誰が悪いというわけではなく価値観の相違をそのまま飲みこんで人と人との繋がりができるんだな、みたいなことを思わせてくれたり、主カプはもちろん晏沈なので二人が恋愛的な意味でくっつくことはないのですが、(白茸としては不本意でしょうが)気持ちのいい友情譚が読めてよかったです。合歓宗を離れた方が良いというのはやっぱり白茸にとっては余計なお世話で、でもそんな沈嶠のことが好きで、そして自分はあれほど強くなれるのだろうかと言っていた白茸が実力で合歓宗宗主になったこと、沈嶠のために宗旨を少しずつ変えようとしていること、でも沈嶠は白茸の気持ちには答えられないこと……少しの切なさがありつつ全部よかったなあと思いました。
次は白龍観のエピソードですね。これもアニメでめちゃくちゃ胸が痛い!と思いながら見ていたので、原作で改めて読むと本当に……。これがのちに碧霞宗との縁に繋がったりもするんだけどやっぱり初一と白龍観観主の死は泣けちゃう……ここ白龍観での晏沈のやりとりがほのぼのしてて和むだけに……。碧霞宗の人たちはアニメ見てても好感度が高い人たちだなあと思っていたので、すごく強いわけではないんだけど誠実な仲間として最後まで沈嶠たちと一緒にいてくれたのも嬉しかったです。そういえば二度目に碧霞宗を訪れたときの晏沈のいちゃいちゃはすごかったですね。碧霞宗だけではないけど試剣大会で狐鹿估が沈嶠の命を狙いに来た時に沈嶠を守るために立ち上がったのが必ずしも超人級に強い人たちじゃないっていう展開も好きでした。
あとは陳恭と郁蔼の話かなー。陳恭は因果として沈嶠と裏表のような存在で、どちらも運命の波に否応なく飲みこまれる天命を持っているんだけどその上でどう生きるかで決定的に違う存在となり、郁蔼は家族同然の存在で身内としての親愛はずっとあるんだけど沈嶠の信念ゆえに袂を分かつしかなかった……という穏やかで優しい人柄に見える沈嶠の苛烈さがわかるエピソードがこの二人絡みのあれこれだったんじゃないかなと思います。
そんな高潔で苛烈に生きる沈嶠が隣にいることを選んだ相手が晏宗主だったというのがラブなんじゃないの!?となるわけですが。ところで魔門の宗主と恐れられている晏宗主だけどそんなに極悪人ではないよね……?二人の弟子たちがいい子過ぎるのでそんなことを思ってしまう……。話は脱線するけど沈嶠の弟子たち二人、晏宗主の弟子たち二人のわちゃわちゃが可愛くて好きでした。沈嶠はともかく、晏宗主めちゃめちゃいい子たち育てとるじゃん……となった……。
ラストはなんとなく沈嶠vsラスボスの対決になるのかと思ったら、これが晏宗主の戦いで。ギリギリまで沈嶠とデートしてたりするわけですが、晏宗主の最後の戦い、それを見守る沈嶠、勝負がついたあと誰よりも早く晏宗主に駆け寄る沈嶠……という何もかもが情熱的で愛に満ちた本編ラスト……!
くっついてからのお楽しみは番外編でしたね。本編だと沈嶠の晏宗主に対する愛情は感じるんですが恋愛感情というより人間愛に近いような感じがしてたので、沈嶠が晏宗主に肌を許すなんて……本当にできるんだろうか……?と思いながら読んでいましたがいざ見せつけられるともうこうなる以外のルートは考えられなくなる不思議。 本編でもちょっと宇文誦に愚痴ったりもしてたけど恋バナ沈嶠かわいいのと、自分の気持ちを頑張って伝えようとする沈嶠がいじらしくてかわいかったです。
そういえば硬派で爽やかな話って書いてそれは本当にそうなのですがキスシーンはめちゃくちゃ濃いです。番外編の伏せ字だらけのところおののいてしまったよ。
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