ゴシップだいすきクラブ
陸林が付き合い始めた頃のトゥーランと四人の生徒たち。
「あなたたち、将軍を見てない?」
「見てないです」
「ていうかなんで僕たちのところに来るんですか?」
基地の食堂で宿題に取り組んでいた四人の元へ歩いてくると、トゥーランは当然という顔で言った。
「なんでって、そんなのわかりきってるでしょう」
大袈裟なジェスチャーと共にトゥーランがため息をつくのを見て、四人は顔を見合わせたあと頷いた。
要するに最近どうも進展があったらしい陸必行と林静恒は以前にも増して一緒にいる時間が長くなり、林静恒の姿が見当たらないときは陸必行のところにいるのではないかと考えた、というわけだ。そしてこの推論はそれなりに間違っていないことを陸必行の生徒たちはよく知っている。
全員が首を振るのを見て、トゥーランは椅子を引いて彼らの横に座り込んだ。
「暇なんですか?」
「まあ将軍もいないことだし」
休憩時間の範囲内、と大したことでもないように答える。テーブルの上のノート画面と複数箇所に映し出されている参考書情報データを見ながらトゥーランが言った。
「あの二人が収まるところに収まったのはよかったけど、あなたたちも大変ねえ」
「そうなんですよ。質問したくても先生最近あんまり来てくれないし」
物理演算の問題にお手上げ状態になっていた闘鶏がここぞとばかりに口を尖らせる。その話題に乗って、逆に薄荷が尋ねた。
「先生たちってどこまで進んでるですか?」
「えー、君たちも知らないの!?」
トゥーランが水を得た魚のように嬉しそうな声を上げた。
「けっこう前に私がもうキスはしました?って聞いたらはぐらかされました。その時はまだ片思いだったのかな?」
「まあ私も直接聞いたわけじゃないんだけどね。私も周六も色々目撃してるわけよ。ていうかあの二人っていつから?君たちがここに来る前から?」
二人が北京β星にいた頃どのような感じだったのか、トゥーランは興味津々のようだ。
「トゥーラン将軍、物理ってできます?」
「物理化学はあんまり。数学とエネルギー物理ならそれなりよ」
そうして四人の生徒たちは宿題を手伝ってもらうのと引き換えに、北京β星時代のことを話し始めた。
「ただ星海学院にいた頃は別に……二人のこともよく知らなかったし」
ホワイトが首を傾げながら答える。
「あっでもあたしが四哥の酒場に行った時もすぐ先生に連絡してたし、うーん……いつからなんだろ」
黄静姝もつられて首を捻った。
「そういえば学院のあの機甲って将軍が寄贈してくれたんだっけ。今思うと色々怪しく見えてくるなあ」
「将軍ってそういうことする人なんですか?」
「聞いたことないわよ!林静恒が誰かにプレゼントなんて!」
「じゃあそのころから将軍もけっこう……?」
「それはあり得るわね。陸校長を前にした将軍ときたら!あんな将軍、白銀要塞時代じゃ見たことないもの」
結局は全員宿題を放棄してわいわいと盛り上がることになった。
背後から人影が近づいて来ているのにも気付かずに。
「二人ってどこでデートするんですかね。やっぱり機甲?」
「機甲といえば精神ネットワークに接続したままセックスするとどうなるか知ってる!?あれは本当、」
「エリザベス・カーラ・トゥーラン!!!」
そうしてトゥーランは林静恒に連行され、陸必行は授業がおろそかになっていることを生徒たちに平謝りしたのだった。
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